沖縄のサンゴの保全・モニタリング記録

サンゴのモニタリング記録:第10回コドラート調査

サンゴの種類ハナバチミドリイシ
通 称触手ワサワサ【死滅】
天 候晴れ
透 明 度20m
水 深6.9m
水 温23.4℃
う ね りほとんどなし
調 査 者山岸
所 見
「受け入れがたい死」でした。



そうです。

たかが「サンゴ1群体の死」ですが、長年観察を続けてきたサンゴの死を目の当たりにすることは、意外にも辛いものでした。

観察開始の2005年当初から、エリア最大の造礁サンゴとして観察してきたミドリイシ。ミドリイシとしてはあまりにも触手を大量に出していたことから「触手ワサワサ」と呼ばれ、観察エリアのシンボル的なサンゴでした。
その触手ワサワサも、骨格表面に生きているポリプを見つけることはできず、全域が死滅してしまっていました。

骨格表面は風化が進み、ポリプがあった穴(莢・きょう)は完全に平らに。付着している藻類やサンゴモなど他の被覆状生物がほぼ完全に骨格を覆っている状態で、死後1年以上は経過していると考えられます。

長きにわたってサンゴ群体の中央に共生していた「イバラカンザシ」の姿も無く、ともに死滅したようです。
もちろん、このサンゴを棲みかとしていたコバンハゼ、スズメダイの幼魚などは見る影もありません・・・



「まぁしょうがないよね、自然界だし、当たり前よね・・・」

とネガティブな記録を取り続けるなか・・・見つけました。



完全に風化した「触手ワサワサ」の上に、新しいミドリイシが着床しています!(写真3・下写真)
ポリプの数も100に満たない、ホントに生まれて数ヶ月の赤ちゃんサンゴですが、しっかりと根付いています。触手ワサワサと同種かどうかはわかりませんが、今後の成長によって明らかになってくるでしょう。



せっかくなので、「触手ワサワサ」の8年ほどの観察を通して確認できたことをまとめておきます。



  • ハナバチミドリイシはソフトコーラルには勝てないが、負けることも無かった。境界が接してからは、一定の攻防(牽制)は継続していたが、どちらかが侵略することもなく共存の道を辿った。

  • ハナバチミドリイシはキクメイシには勝てない。隣接部はキクメイシの攻撃に常にさらされており、表面の肉は溶かされて、白色化していた。このため、ハナバチミドリイシがキクメイシに覆いかぶさって、日光を遮ることはできなかった。

  • 礁縁部のようにうねり・波のあたりが強い箇所では、ハナバチミドリイシは上部に成長する(螺旋状に2階建化)戦略はとらない。(かつて盛り上がってきた箇所があったが、自然に消滅した。)

  • 大きさの割には共生生物が多くは無かった。固着・共生していたイバラカンザシの他に、サンゴのエダの隙間での共生を確認できたのはコバンハゼのみで、意外にも甲殻類の観察記録は無かった。他にルリスズメダイ、ネッタイスズメダイ、メガネスズメダイの幼魚の棲み込み確認できた。


※上記はあくまでも「触手ワサワサ」の観察記録を通しての所見です。同種のサンゴの一般的な生態を示したり、定義したものではありません。

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