沖縄のサンゴの保全・モニタリング記録

背景

沖縄本島西海岸には「砂辺」と呼ばれる本島でも有数のダイビングポイントがあります。この砂辺のサンゴは1998年の白化現象により、そのほとんどが死滅してしまいましたが、その後長い時間をかけて新しいサンゴが少しずつ育ち、2005年の夏にはとうとうこの小さなサンゴたちの産卵を確認することができました。やっとこの海の「循環」が戻り始めたのです。

このまま、かつてのような生命(いのち)溢れる砂辺の海に戻るのかと期待していた矢先に、以前から計画のあった護岸工事が着工するという知らせがありました。この回復しつつあるサンゴ礁に、工事の影響が及ぶ可能性は決して低くはないと考えられます。また、オニヒトデの食害や赤土の流出被害などについても、県内他地域と同様に決して見過ごすことはできない状況にあります。

現在、現場で潜っているダイビングインストラクターの多くは、以前の“美しい沖縄の海”を知らない世代です。
かつてのサンゴ礁の海を知る人は「昔はきれいだった」と口を揃えますが、どこに、どんなサンゴが、どれだけ生育していたのか、そしてそれらのサンゴはどれほど価値のあるものだったのか、これらを知るための科学的なデータは残念ながらほとんどありません。わずかに残された海中風景写真を見ることができるのみでありますが、これも「この写真はこの場所を撮影したものである」という情報は撮影した本人に確認するより他は無いというのが現状です。このままでは、私たちもこれまでと同様に「昔は良かった」という言葉を次の世代のダイビングインストラクター達に繰り返すことになるのかもしれません。

砂辺で日常潜っている私たちダイビングインストラクターが、今のサンゴ礁の状態を科学的な手法を用いて把握し、経年により起こる変化や、工事の進行とともに起こりうる変化をしっかりと見つめ記録していくことは、砂辺を潜ってきた私たちの使命であると考え、こうした想いに共感する地元のダイビングインストラクターが集い「砂辺のサンゴを見守る会」を結成するに至りました。

※「砂辺のサンゴを見守る会」は活動範囲の拡大にともない、読谷、嘉手納、北谷沿岸のエリアを「ニライ地区」と定め、本会の名称も「ニライ地区のサンゴを見守る会」に改称しました。